みなさんこんにちは
フミです。
ラジエーションハウスで一躍有名になった(なってないかも)放射線技師を10年以上しています。
放射線技師はX線撮影やCT、MRIなど画像検査が主な仕事です。
そこで放射線技師的に本当にこの検査必要なのか?なと思う時があります。
放射線技師が取り扱うCTやMRIなど機器の進歩は著しく、昔に比べがんの早期発見や早期治療ができるようになりました。
ですが、画像だけで、がんの診断が100%できるわけではありません。非常に小さな「がんの疑い」と所見があっても、それを確定診断できるわけではなく、さらには腫瘍マーカーの検査などを行い、初めて確定診断となり、結局がんではないこともあります。患者様は、かなりに肉体的な負担と経済的負担を強いられています。
医療に無駄はつきものですが、費用対効果なども考えないといけません。
そこでEBM(evidence based medicine)に基づいた医療やchoosing wisely(チュージングワイズリー)などの言葉が少しづつ浸透してきています。
choosing wisely(チュージングワイズリー)とは
医療者と患者が、対話を通じて、科学的な裏づけ(エビデンス)があり、患者にとって真に必要で、かつ副作用の少ない医療(検査、治療、処置)の“ 賢明な選択” をめざす、国際的なキャンペーン活動です。 (参照元:choosing wisely japanのHPより)
科学的な裏付けは?
近年医療分野において増加している「メリットよりデメリットが上回る行為がリスト化する活動」が行われています。医療の分野で最前線を走るアメリカで始まった活動で、2014年には250項目程度だったリストが2019年には550項目まで増えています。
日本では、総合診療指導医コンソーシアムが、以下に挙げる”5つのリスト” を発表しています。
1.健康で無症状の人々に対してPET-CT検査によるがん検診プログラムを推奨しない
2.健康で無症状の人々に対して血清CEAなどの腫瘍マーカー検査によるがん検診を推奨しない
3.健康で無症状の人々に対して MRI 検査による脳ドック検査を推奨しない
4.自然軽快するような非特異的な腹痛でのルーチンの腹部CT検査を推奨しない
5.臨床的に適用のないル-チンの尿道バルーンカテーテルの留置を推奨しない
科学的根拠に基づくと上のリストの5つはすべて推奨されていません。このような項目が550項目もあるようです。
症状が出る前に異常を早期発見できる可能性もありますが、異常のすべてが治療の必要な病気とも限りません。自然に治ったり、加齢に伴ったものこともあります。
日本は逆行している
逆行している例として都営バス運転手に対してMRI検査を義務化した東京都の政策などがあります。バス運転手が運転中に意識を失う事例が全国各地で相次いで発生したことを受け、東京都は都営バスの全運転者を対象に、3年に1回の脳ドック受診費用の全額補助を開始しました。
意識消失の原因は様々ですので、脳ドックでその原因を一つ取り除いたとしても根本的な解決にはなりません。
無駄な検査や処置で・・・
高齢化を迎えている日本では医療財政がかなり逼迫した状況になっています。そのため科学的根拠があるものにお金をつぎ込むべきです。
安心のための検査を全否定するつもりはありませんが、むやみやたらに検査や処置することで、医療費の負担が増えます。
医療費の負担が増えると、本当に必要な所にお金が回らなくなる可能性もあります。
画像検査などは時間がかかります、予約検査がいっぱいで緊急を要する患者様の検査ができなくなってしまう可能性もあります。
まとめ
現在の医療財政を鑑みると、無駄を許容するほど余裕がありません。
本当に必要な検査のために、無駄な検査や、科学的な根拠が乏しい検査はなるべく減らすべきです。ただし、無駄を省くことで、医療の質の低下つながってはいけない。
永続的に質の高い医療が受けられるように、賢い選択を医師も患者もする必要があります。