こんにちはフミです。
今回は家創りでも四国の事でもありません。
タイトルを見てもらえればわかると思いますが、CT画像診断の見落とし問題を、現役の診療放射線技師が考えてみました。
がんや脳梗塞、心筋梗塞など、死に至る病気を少しでも早く発見するために、CTやMRI検査などの画像診断は欠かせません。
レントゲンさんがX線を発見してから約120年、CTやMRIも開発から約40年ほどたちコンピューターの発展と共に目覚ましい発展を遂げています。
しかし、医療事故情報を収集する日本医療機能評価機構によると、画像診断の見落としは昨年だけで32件にも上ったそうです。
そこでまず、日本ではどれぐらいのCT、MRIの検査が行われているか調べてみました。
目次
日本におけるCTおよびMRIの総撮影件数
まず厚生労働省が公開している「社会医療診療行為統計」からデータを拝借します。審査が行われた6月の1ヶ月分のデータなので、12倍して1年分の撮影件数を概算しました。
CTの総検査数は
件数 | |
CT撮影 イ 64列以上マルチスライス型機器 | 519113 |
CT撮影 ロ 16列以上64列未満のマルチスライス型機器 | 1034709 |
CT撮影 ハ 4列以上16列未満のマルチスライス型機器 | 104464 |
CT撮影 ニ イ・ロ又はハ以外 | 83465 |
CT撮影2回目以降 | 126549 |
計(2017年6月分) | 1868300 |
1年換算 | 22419600 |
年間のCT撮影件数はのべ約2240万回。
MRIの総検査数は
件数 | |
MRI撮影 1 3テスラ以上の機器 | 73221 |
MRI撮影 2 1.5テスラ以上3テスラ未満の機器 | 713871 |
MRI撮影 1または2以外 | 172489 |
MRI撮影 2回目以降 | 89726 |
計(2017年6月分) | 1049307 |
1年換算 | 12591684 |
年間のMRIの撮影件数はのべ約1260万回。
この二つの結果と日本人の1.2億人と考えると、1年間でCT検査は5人に1人、MRIは10人に1人ぐらいが撮影する計算になります。
日本のCT, MRI装置の台数を世界各国と比較
OECDが公開している統計データを用いて世界のCT、MRIの装置の台数を求めることができます。
OECDとはヨーロッパ諸国を中心に、日本とアメリカを含めた37カ国の先進国が加盟している国際機関です。
CT | 台数/100万人 | |
1 | 日本 | 107 |
---|---|---|
2 | オーストラリア | 56 |
平均 | OECD | 25 |
CT | 総台数 | |
1 | 日本 | 13636 |
---|---|---|
2 | アメリカ | 13065 |
合計 | OECD | 46180 |
MRI | 台数/100万人 | |
1 | 日本 | 52 |
---|---|---|
2 | アメリカ | 38 |
平均 | OECD | 14 |
MRI | 総台数 | |
1 | アメリカ | 12137 |
---|---|---|
2 | 日本 | 6578 |
合計 | OECD | 29829 |
2014年のデータではCTにおいては総台数、100万人当たりの台数ともに日本が1位でした。MRIは総台数はアメリカに次ぐ2位で、100万人当たりの台数では1位でした。
日本のCT, MRI撮影件数を世界各国と比較
装置の台数が多いのはわかりましたが、撮影件数を見てみましょう。
CT | 撮影件数/1000人 | |
1 | エストニア | 585 |
---|---|---|
6 | 日本 | 176 |
平均 | OECD | 140 |
CT | 総撮影件数 | |
1 | アメリカ | 81223830 |
---|---|---|
2 | 日本 | 22419600 |
合計 | OECD | 181922226 |
MRI | 撮影件数/1000人 | |
1 | トルコ | 133 |
---|---|---|
4 | 日本 | 98 |
平均 | OECD | 57 |
CT | 総撮影件数 | |
1 | アメリカ | 34090410 |
---|---|---|
2 | 日本 | 12591684 |
合計 | OECD | 86649591 |
1000人あたりの撮影件数がCT,MRIともに日本より多い国がヨーロッパのいくつかの国とアメリカです。
装置の台数は人口比では多いですが、撮影の件数は意外と少ない。しかしヨーロッパの国に比べ人口が多いので総撮影件数はアメリカに次いで多い。
読影する放射線診断専門医の数は?
まず放射線診断専門医ってのは何かからなんですが、その前に検査の流れを説明します。
このよう流れで検査が行われます。
そこで画像診断報告書を作成する放射線診断専門医は、全身の画像診断を的確に行う医師の事です。・・・わかりにくいので例えばですよ「肺に5cmのがんが写っていればほとんどの医師や放射線技師にもわかります。これが5ミリ以下の大きさだとがんの専門医でも見落としてしまうこともあります。それを見逃さず『肺がんの疑い』と診断できるのが放射線診断専門医です。」
しかし、この放射線診断専門医の数は5000人を少し超えるぐらいです。
つまりCT約2240万回とMRI約1260万回の検査を約5000人で見るとなると一人当たり年間7000件の検査を読影しないといけません。年間250日ぐらい勤務だと考えると1日30件弱の検査の読影しないといけません。さらに1件につき画像が200枚だと仮定すると約6000枚の画像を毎日読影しないといけません。また、診断の難しい疾患になればなるほど、読影のスキルも必要になるため、放射線診断専門医1人当たりの負担はより大きくなります。
まとめ
CTやMRIの発展で撮影件数が増え、1検査あたりの画像の枚数が増えたことで放射線診断専門医の負担は急激に増えている。
現在は、放射線診断専門医の負担は非常に大きいが、今後、AIなどの活用が進むにつれ放射線診断専門医の負担は減り、より安全で精度の高い画像診断になっていくと思われる。
また小規模や中規模の病院などでは放射線診断専門医などが常勤でない病院もあるが、AIの活用が進むと診断の精度はあがると思われる。
・・・ただし最近の報道のCT画像診断の見落とし問題は放射線診断専門医が原因ではなく、システムの欠陥とヒューマンエラーが重なり最悪の結果になってしまっている。
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